2019年10月8日火曜日

映画『バオバオ フツウの家族』公開のご案内

こんにちは。

今日は、10月12日から名演小劇場で公開される映画『バオバオ フツウの家族』をご紹介します。

f:id:nagoyalgbt:20191007152713j:plain【INTRODUCTION】

赤ちゃんは誰の子? 誰が育てる? さまざまな問題を抱えながらも愛を信じ、新しい家族のカタチに向かって宇宙飛行士のような勇気で挑もうとする、ミレニアル世代の清新なLGBTQ映画

ロンドンの会社で働くジョアン(クー・ファンルー)と取引先の友人チャールズ(蔭山征彦)には、それぞれ画家シンディ(エミー・レイズ)と植物学者ティム(ツァイ・リーユン)という同性の恋人がいる。
4人はそれぞれの想いからシンディの子宮を借りた妊活に同意し、チャールズとティムの精液を採取してシンディの子宮に注入するのだが一向に妊娠しない。思い余った4人は病院での体外受精を決断する。ジョアンとシンディの卵子にチャールズとティムの精子を注入してできる二つの受精卵をシンディの子宮に戻して、男女の赤ちゃんを産み、男の子はジョアンたち、女の子はチャールズたちが引き取るというものだ。
順調そうに見えた矢先シンディは出血する。子供を奪われる悪夢にうなされるシンディのことが気がかりでジョアンは仕事で失敗をしてしまう。ロンドンであと1年がんばれば英国籍も取得できるというジョアンにとっては大きな痛手だ。そんなところへチャールズが小切手をもって訪ねてくる。病院から戻ったシンディは偶然それを見つけ、逃げるように台湾に戻り、幼なじみで好意を寄せてくれている警官タイ(ヤン・ズーイ)を頼る。一方、チャールズはティムに、赤ちゃんが自分たちの子供になることを伝える、手を打ってきたと…。
(引用:公式ホームページ http://baobao.onlyhearts.co.jp/


【DATA】

『バオバオ フツウの家族』

2018年製作/台湾/97分/原題:愛的卵男日記/英題:Baobao
出演:エミー・レイズ/クー・ファンルー/蔭山従彦/ツァイ・リーユン/ヤン・ズーイ
監督:シエ・グアンチェン/製作:リン・ウェンイー/脚本:デン・イーハン/製作:Helsinki-Filmi/配給:オンリー・ハーツ、GOLD FINGER/後援:台北駐日経済文化代表処台湾文化センター


【IMPRESSIONS】

2018年秋に台湾で公開された本作は、それに先立ち同年8月から9月に開催された「第五回台湾国際クイアフィルムフェスティバル」のオープニング作品として上映され、海外では、スペインとロスアンゼルスの映画祭で上映されているよう。
この物語は、台湾で新人登竜門としていちばん大きな脚本賞のコンペから生まれた。2015年、これに応募した国立台湾大学大学院に在学中のデン・イーハンの脚本『我親愛的遺腹子』が優秀賞を獲得し、それがプロデューサーのリン・ウェンイー林文義の目にとまり、映画化が進んだとのこと。リン・ウェンイーは同性愛に詳しいシエ・グアンチェンを監督に起用し製作を開始したという経緯があるらしい。

この映画を単なる愛に関する現実との問題ととらえるか、問題提起の映画として捉えるかによって、この映画の評価もレビューも変わってくる。これを書くにあたって、同性愛者の当事者や非当事者の感想や著名人のコメントに目を通したが、当事者・非当事者関係なく賛否両論、特に価値観や差別感もさまざまで愕然とした。そしてまだまだわれわれ当事者には生きにくい社会であることを痛感した。ネタばれになるので詳しいところまで書けないのが歯がゆいが、法的に家族と認められないと分娩室に入れないなど制度的に同性愛当事者では認められないシーンでは、不条理なルールに腹立たしささも感じたし、登場人物の心の痛みに共感しすぎてしまい泣けてしまって冷静に観ることができない部分もあった。愛のあり方、家族としての価値観を観る側として考えるには素晴らしい作品であるし、映像の美しさ音楽の使い方も秀逸、とりわけ主人公4人の細かい心理描写を絶妙に表現する演技には脱帽。

しかし、この映画を社会的な問題提起として捉えるとしたら、評価は変わってくる。今年5月に同性婚が合法化されアジア全体から見てもLGBTに関して寛容度の違う台湾を現在の日本に置き換えることはできないし、ストーリーの設定自体を、荒唐無稽・絵空事・夢物語と捉えられてしまっておかしくない。
ただ、今後を含め、LGBTに関する社会のありようやこれからの取り組み、当事者・非当事者を問わず個々人の高い意識の持ち方や覚悟や価値観を真正面から受け止めていく契機としては充分に意味が見出せる映画ではあった。

LGBTに生まれるということは、多くの場合、親を動揺させ、将来に不安を伴い、理解をされにくい立場にあるから、本当の自分の気持ちを認めてほしい、知ってほしいという欲求が非当事者に較べ多いと感じている。相当リベラルな価値観を持つ親の元に生まれなければ、のびのびと幼少時代を送ることができない。その中で自分自身を受け入れきれずに大人になってしまった当事者にとっては、生きづらさを感じずにはいられないし、パートナーや周りの人たちへの承認欲求は自動的に強くなってしまう。存在が可視化されていないことはそこに由来すると思っている。できれば、それを踏まえたうえでこの作品を鑑賞していただきたいと感じた。


予告編:https://youtu.be/OaZOHoayVm4
名演小劇場HP:http://meien.movie.coocan.jp/


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